2003/09/15

 二日目。最初の(文字通り)山場を迎える日です。体調は良好。当然多少の筋肉痛とお尻の痛みはありますが、問題ない範囲です。いざ山越えへ!
 でもその前に、まずは観光(これが、遅めの出発時間と合わせて後に大きな負担を招く結果となる)。

 お目当ては山の辺の道沿いに点在する国内最古級の大規模神社群。本当は山の辺の道そのものを歩きたいのだけれど、自転車連れでは難しいので、桜井から天理に至る自動車道沿いに移動しつつポイントポイントで立ち寄ります。
 最初のチェックポイントは「大神神社(おおみわじんじゃ)」。三輪そうめんの「みわ」で、周辺はそうめん屋だらけです。マジで。この神社、大和国一宮で、記紀神話でも最古級かつ重要な神社として登場します。一般には大鳥居で有名で、他にもいろいろと話題に事欠かない、神社マニア垂涎の(笑)古社です。以前一度立ち寄ったことがあるのですが、じっくり見れなかったので、リターンマッチです。とはいえ今回も入山せず、見所の一つである三つ鳥居すら見ていないのですが…。神社を語るコーナーではないので細かいことは控えておきますが、周辺にいくつもの関連神社があったり、参詣客も相当多いなど、流石に大した神社でした。そうそう。ここの神社、神主さんや巫女さんが拝殿の前を通るとき、必ず立ち止まって一礼して行くのですよ。ほかの神社でもそうなのかも知れませんが、あまりにそういうシーンを見る頻度が高いので目につきます。また関連神社の一つに狭井神社というのがあって、病気平癒に霊験ありという御神水(井戸水)をいただけるのですが、こぞって水を汲みに来ている近隣の方々が親切に場所を譲ってくれたり説明してくれたりしたのが好印象でした。信仰が地域に根付いてるんですね。羨ましいです。
 大神神社とセットで、もう一つ、檜原神社というところへも是非立ち寄りたいと思っていました。ここは、最初の元伊勢と言われる神社です(ロマンです 笑)。ところが、道をやり過ごし、素通りしてしまいました。残念ですが、楽しみを次に残す、ということで諦めましょう。
 二つばかり大きな天皇稜を眺めた後、次に「大和神社(おおやまとじんじゃ)」に立ち寄ります。ここも、大神神社と並び古いとされる神社で、かの戦艦大和にはここの神様のご分霊をお祭りしていたのだそうです。ここの手水舎で、面白い川柳を目にしました。……いい川柳ですね(笑)。ところで肝心の神社の方は、確かに大きなお社なのですが、大神神社ほどには大々的ではなく、普通にどこにでもあるような規模の構えなのです。この違い、気になるところですね。私の情報が間違っていたのでしょうか?
 最後に、締めの「石上神宮(いそのかみじんぐう)」に向かいます。神宮マニアとしてここははずせません(笑)。ここもリターンマッチで、詳細は省きますが、刀を御神体として祭っている神社です。恐らくは、天皇家に功績のあった半島系の武将が正体なのでしょう。神宮号を古くから名乗っている神社なので相当な規模かと思いきや、それほどでもありません。日前宮くらいでしょうか。実はこの神宮のすぐ近くに、天理教(神道の一派のようです)の本部があります。地名も「天理市」と言うだけあって、ここいら一帯における天理教の勢力は半端じゃありません。町中が天理教関連施設で埋め尽くされているとでも言いたくなるような状況なのです。どうやら、かつては強大であったろう神宮の勢力は、明治以降この新興勢力に飲み込まれてしまったようです。天理教の普及に大神神社の勢力が加担したということもあるようです。あるいは、その辺の勢力争いもあったのかもしれません。

 さて。石上神宮近くのコンビニで腹ごしらえをして、サイクリング再開。天理から名阪国道沿いに東を目指します。この日の目標は亀山です。昼食をとりながら宿も押さえました(インターネットで宿探ししてます)。時刻は14時。「ちょーっとのんびりしすぎたかなぁ……この分だと下手すりゃ上野通過は18時頃になるなぁ」などと思っていたのですが…………甘かった!
 名阪国道は自動車専用道なので、自転車ではそれに併走する国道国道25号線を走ることになります。が、天理から都祁村手前の福住に至る一部だけは、国道ではないのです。これが落とし穴でした。手持ちの地図(今回はツーリングマップルをメインに使用)上ではほぼ真っ直ぐに描かれているこの一般道。とんでもない! ぐねぐねと曲がりくねる、山肌の果樹園に張り巡らされた農道のような道なのです。細く、とても私の足では自転車をこいで走ることなんて出来ない強烈なアップダウン……いや、アップだけですね(汗)が連続します。あれを走破出来るようなら私はこんなちんたらした旅なんてせず、どっかのクラブチームにでも所属してレースしてますよ。人はもちろん、車だって滅多に通りません。本当に山道なんですよ。……呆然としましたね。本気でギブアップを考えました。だってまだ、山越えコースに入ったばかりなのだもの。次に出くわすはずの大きめの街は上野市。平地なら3〜4時間程度の距離でしょうが、この坂が続くとなると……生きて帰れないかも知れません(結構真剣)。この時点で、先の時間予測はあっさりとキャンセルされてしまいました。どんなに楽観的に見積もっても、上野へ19時には着けまい……。いや、そもそもこんな山道を上野まで越えられるのか…? でも。こんな早々に諦めたくはありません。最悪でも都祁村まで行ってみて、そこで最終判断しようと腹を決めました。自転車走行は最早ギブアップ。徒歩での山越えを試みます。昼の暑い時間帯に地獄の行軍です。途中、道に迷って予定外のサービスエリアに迷い込んでしまったりもしましたが(滅入っている時に道に迷うと、絶望感が倍増します)、なんとか、福住までの一山を越えました。たった一山。直線距離にして約7km。この最小区間を、通常の倍以上の2時間弱かけてようやくのクリアです。狂喜乱舞する気力も失せてました。(2004/06/28追記)
 ところが。福住で道が国道となってからは、道路の整備状態が大変よく、アップダウンも自転車走破可能な程度のものに急変するのです。楽勝〜(笑)。途中、後輪泥よけの留めネジを紛失するハプニングもありましたが、もうそんなことで滅入ったりはしません。淡々と紐でしばって急を凌ぎます。出だしこそつまずきましたが、ここから一気に巻き返しに転じ、ラッキーなことに、日が暮れ切るころには上野にたどり着くことが出来たのです。あまつさえ、ラジオの送信所(たぶんNHKの)を見つけるような余裕さえありました。
 上野ではゆっくり夕食と休憩を取りました。その間にガストビジョンで星野監督の胴上げも見たりして。ガストの前に、オークワがあって驚きました。こんなとこまで勢力伸ばしてたんですね。時間的に許せる限りの休憩を取った後、所期の目標地、亀山を目指します。既に日はとっぷり暮れています。私の愛車はヘッドライトがダイナモでなく電池式なのですが、実は夜道を照明するには充分な明るさではなく(存在を知らせるマーカーの用はなしていると思いますが)、夜間走行にはかなり神経を使います。コースによって、トラックが併走したりすると命懸けです。が、走ります。
 伊賀インターあたりまでは緩やかに登りながらもほとんどカーブのない直線コース。そしてそこから最後の山越えです。名阪国道からもやや離れます。こういうところは、何かあったときに助けを呼べない不安が胸をよぎります。幹線から外れるので、道の状態も心配です。ツーリングマップルにも「採石運搬トラックが我が物顔で走っていて雑然としている」とあります。国道9号線のようにトラックがすっ飛ばす、細い悪路かもしれません。少なくとも、充分な街灯照明は望めないでしょう。萎える気力を奮い起こしてペダルを踏み出します。
 全体としては、心配は杞憂でした。思いのほか整備状態の良い、特に最初の方はしつらえたように快適な道が出迎えてくれます。全体に下りの区間なので、下りは急ですが、上りは知れてます。街灯照明はもちろんありませんが、いい具合に月明かりが照らしていてくれます。もっとも、途中一部区間の路面状態はかなり悪いものでした。ツーリングマップルに記載のあった、採石場の付近ですね。ハンドルを取られそうになるほどでっこぼこ。舗装なんてされていない様子。MTBではあるまいし、比較的華奢な私の愛車には酷な路面です。ここでトラックに併走されると確かに嫌だな、と思いましたが、この時間はほとんど車は通りませんでした(時々気まぐれな乗用車と出会いましたが)。ところどころ月明かりの届かない区間も、怖い区間です。慎重に少しずつ進まないと、ほとんど路面が見えません。途中ヘッドライトの電池が切れて手持ちのLEDライトで凌いだりしながら、どうにか、23時前には亀山にたどり着くことが出来ました。予想よりもかなり早い到着でした。お宿のフロントのおじさんの対応が親切で(自転車屋さんをあたってくれたりした)、なんだか嬉しくなりました。
 夕飯は既に採っていたので、ホテル横のスーパーストアで飲み物と翌朝用のパンを買って床に入りました。
 結局、どうしようもなかったのは天理から福住までのほんの短い区間だったわけです。「国道でない道は要注意」という教訓を得ました。以前走った鈴鹿峠越えと比べるなら、この区間を除けば25号線沿いの方が楽だったと思います。が、例外部分がねぇ……。走破をお考えの方、参考までに。
#国道165号線沿いがどうなのか、気になるところですね。

 余談ですが。今回の旅では過去の反省から日焼け止めクリームを使ったのですが、この日は足だけ塗り忘れてしまってました。顔や腕は平気なのに、足、それも右足の膝裏からふくらはぎのあたりだけが、あっかくなってヒリヒリします(笑)。なるほど、太陽は南西から照りつけていたという訳ですね……。
 ちなみに足の筋肉の方は、最後まで大して悲鳴上げませんでした。前日痛かった太ももはおとなしいもんで、どちらかというとふくらはぎが少し引きつってました。はて。確かに今回は比較的筋肉に無理をさせない走り方をしていると思うけれども、これはちょっとおとなし過ぎやしないか? もしかして明日以降に地獄を見るのか?(…だとすると歳だ 涙) 足の筋肉は大した張りも見せず割と細いまま。さて、明日はどうだ。

10:15
桜井駅発(山の辺の道観光)
14:00
天理市布留石上神宮前ファミリーマート発
16:00
都祁村
18:00
上野市ラジオ送信所前
18:30
上野市ガスト着(夕食)
20:00
20:53
伊賀SA着(休憩)
21:10
22:10
国道1号線合流(新所西)
22:45
亀山第一ホテル着(宿泊)

2004/06/28追記
 その後、年が明けて1月。夏に参加した無線コンテストの祝勝打ち上げ会で、JI3OPA先輩から「それ、道間違えてるぞ」という衝撃的な指摘をいただきました。なんでも国道25号の本線は名阪国道沿いではなく、もちっと南から入る道があるのだとか。地図を確認してみると、、、確かに!!! 石上神宮のあたりから東進する国道に「25」の数字が記されている…(汗)。完全にアウトオブ眼中だったぁ〜(涙)。
 地図上では曲がりくねっていささか山道気味に見えるため、無意識にはずしてしまったのでしょう。でも実際には、流石国道だけに勾配のきつさはある程度限定的なのだそうで、私の選んだ道は、もとより抜けるためのものではなかったということなのでした。なんだったんだ、あの地獄の峠越えは……。

2003/09/15 記
2003/11/11 修正
2003/11/24 加筆
2004/06/28 追記


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