いよいよ後半戦の山場です!
本日のメインイベントは、何と言っても「箱根越え」。本日の、というより、今旅行の、と言うべきでしょうか。前回9年前の箱根越えは、夕方から深夜にかけて、でした。明るい内に芦ノ湖を眺めての箱根越えを、その時から夢見ていました。いわばリベンジ。念願かなっての再挑戦にドキドキです。
朝。いまいち体調がスッキリしません。疲れがたまっているようです。筋肉の痛みなどはありませんが、なんか眠い。乗り物が自転車でなく車だと居眠りしてしまいそうな感じです。端からの不安要素です。
白状すると、体調が万全でないから不安だ、とは必ずしも言えませんでした。ビビッてたんです、箱根に。先入観なしに挑戦した前回も、相当苦しみました。途中何度も休憩を取って、蛇行しながらの登坂でした。当時はまだ長距離行の経験が浅くはありましたが、一方で現在は体力・筋力が落ちています。本当のところ、出発前からかなり心配だったのです。
富士から三島までのおよそ25kmは準備運動。道は国道1号線ではなく、併走している県道163号線を選びました。海岸線から2本ほど内側の道です。広くはありませんが、走りやすい道です。まっすぐな平地を、目覚ましがてらのんびり進みます。が、なかなか体は目覚めてくれず、いまいち車速が波に乗りません。それどころか、三島が近づくにつれて緊張してきます。いや、情けない…。まぁでも、そこそこの時間で三島市街、箱根路入り口までたどり着きました。ここでゆっくり、昼食を取ります(ちょいと気位の高そうな和食屋さんです)。心を落ち着かせ、腹をくくるために。
前回走ったときはこの辺りから、区間毎に相方と別れて単独走行するようになりました。走るペースが違いすぎるということで。連日の疲れもあって、少し険悪な雰囲気が出てきていました。複数人での自転車旅行ではよくあることのようです(上司もそういう経験があったと話してました)。「何時頃までにどのあたりで落ち合おう」という約束をしておいて、そこまでは別行動です。
最初の合流地点が三島でした。そこまで私が走ったのはどこかのバイパス道でした。道は真直ぐで走りやすいものの、人家が道から少し離れていて(数十m荒地を挟んでいる)店などがほとんどなく、飲食物の補給もままなりません。更に悪いことに途中パンクのアクシデントに見舞われ、何もない道端で独り寂しくパンク修理をした悲しい記憶があります。
どうやら今回はそれとは違う道を選んだようです。記憶にある悲しい風景には出会いませんでした。前回、ここまでの道選びは相方に任せ、自身はあまり地図を確認していませんでした。別れてからもあまり深くは考えず、「とにかく1号線沿いに走れば着くんだろ?」くらいの感覚でしたので、恐らく前回は1号線を走ったんじゃないかと思います。地図を見ると、この区間の1号線は「沼津バイパス」と書かれています。それっぽいじゃないですか。ですが地図を見る限りでは、沼津バイパスはそれほど寂しい道のようには思えません。もしかすると、何か思い違いがあるのかもしれません。
ちなみに前回は、その後も三島〜箱根峠と、東京に入って(どこか忘れたけど)から最終警視庁前までなどの区間で別行動をとりました。他は、多少離れて走ることはあっても、概ね併走していたと思います。二人の関係も安定を取り戻してました。複数人で走るときは、適度に別行動区間を挟んでいくのがいいようですね。それにしても。今になって思うと、携帯電話も持っていなかった(ような気がする)あの頃、よく見知らぬ土地で再合流できたもんですね…。走行中も時々現在状況を連絡しあってた気がするし…。一体どうやったんだ? アマ無線機でも使ったっけかなぁ?
ってな具合で、これまでに増して前回の記憶を掘り起こしてはいろいろ思い巡らします。ほら、緊張してる(笑)。
さて。いよいよ箱根チャレンジです。三島に大きな神社があって、寄りたかったのですが、気分的にそれどころではありませんでした。まぁ、自分が関心のある方面の神様ではなかったようなので、いいのですが。
やはり様々な需要があるのでしょう。箱根路の登り口に、ローソンがあります(今回は別のコンビニで支度を整えたのですが)。そこから数百メートルの区間、少し登りらしくなってきた真っ直ぐな松の並木道が入山者を出迎えてくれます。いかにも「ここから箱根路だぞぉ!」と言わんばかりです。清々しく美しいのですが、これから始まる10km超の試練を思うと、ちょっと人を馬鹿にしているようにも思えます(笑)。余計に緊張が高まります。登りの辛さより先に、緊張のドキドキで心肺機能に負担をかけそうです(いや、マジで)。このあたりの風景は、前回の記憶とよく一致しています。
松並木を抜けて少し行くと、またなんとなく覚えのある風景が見えてきました。ここは……前回最初にへばって休憩した場所ではないか? なんだそれは、まだ登り始めたばかりじゃないか(笑)。どうやらこの段階では、体力の衰えよりも経験が勝っているようです。実際、登りの半分くらいまでは、ギアも最低速から一つ上のままで問題なく登って行けます。流石に半分を超て所々頑張らないと登れない区間が出てきてからは、最低速ギアに落としっぱなしでしたけどね(でないと足を休ませられない)。でも、ゆっくりであれば登れない坂ではない。心配は杞憂でした。前回と違って、日中の早い時間帯での挑戦であることも効いているのかもしれません。
後半、二度ばかり休憩を入れました。一度目の休憩を終えて少し登ると、なんか茶屋らしいお店が……。自販機の並び具合に見覚えのあるお店です。確か前回ここで一息入れたでは……あぁ、今回もここで休憩すれば良かった…。このお店のほかにも、陸橋とか、茶屋とか、所々記憶に残っている風景があります。9年も前のことだけど、覚えてるもんですねぇ。我ながら感心しました。
二回目の休憩を取っていると、明らかに同類であるMTBがこちらも一所懸命登ってきて、追い抜いて行きました。軽く挨拶を交わします。負ける訳にはいくまいと、後を追います。ゆっくり、ゆっくり、時に前後を入れ替えながら、彼とは結局峠まで一緒でした。
峠には、ファミリーマートがあります。これが、終点の目印です。前回もここで相方と箱根峠走破を喜び合いました。今回同行者はいませんが、途中から併走してきたMTBの兄ちゃんと記念写真を撮りあって交歓します。話を聞いたところ、彼は東京の方を同じく日曜日に出発して、伊豆半島を一周してきたのだそうです。山だらけの半島ですよ。半島の西側には箱根どころではない、とても自転車では走れないような山道もあったそうです。スゴイですねぇ。私はこのファミマ前でゆっくり峠制覇の満足感を楽しんだのですが、彼はその日のうちに東京まで帰り着くつもりということで、休む間もなく先に行ってしまいました。峠から東京までは100kmほど。彼の家まではもう少し短いそうですが、それでも夜中までかかるでしょう。無事帰りつけたでしょうかね?
少し観光も楽しみました。芦ノ湖畔の、箱根関所資料館。定書とか、なんかそれっぽくて気分出ます。お土産に寄せ木細工のからくり箱を買いました。昔親父にもらったからくり箱が印象的で、いつか自分でも買おうと思ってました。これでひとつ、思いが実現しました。いいとこですね、箱根。是非また、ゆっくりと観光に来たいものです。
でも、今はあまりゆっくり出来ません。翌日は天気が下り坂の予報。少なくとも天気の良い今日のうちに山を降りてしまいたいところです。一方で箱根を越えた体をゆっくりいたわってもやりたいので、この日の到達目標は「日が暮れる前に小田原」と定めていました。計画に沿うべく、好きな温泉にも入らず(今回の旅行では温泉一度も無し……無念です)さっさと下り始めます。
前回の記憶どおり、相当急な下りの連続に腕と指とブレーキシューが悲鳴を上げます(笑)。峠越えは通常下りが天国なのですが、箱根くらい長区間急な下りが続くとこれはこれで試練です。ブレーキから手が離せない。顔が痒くっても、掻くことも出来ない(実際そういうことがあったらしい。これ、結構きつい 笑)。油断するとスピードが出過ぎて、少しでもハンドルがぶれるとぶっ飛んじゃうからね。ハンドルから手を放すのは命懸けです(まぁ、思ったほどきつくはありませんでしたが)。前回はこれを深夜に下ったのだから、我ながら命知らずだったと思いますよ、ホントに。
今回の旅では、前回と違って同類と出会う機会がほとんどありませんでした。やはりオフシーズンだからでしょうかね…。走っている間はすれ違っても気づかないことも多いのですが、そうはいっても気づけば挨拶を交わします。三島までの区間で記憶しているのは、浜名湖で追い抜いたMTBの兄ちゃんだけでした。でも、流石に箱根は別格のようで、峠で一緒した兄ちゃんの他にも、登り半ばですれ違ったツアー車(もちろん挨拶した)、芦ノ湖から最後の登りをこなしているときに颯爽と追い越して言ったツアー車(だったと思う。抜かれる身だったので、挨拶は出来なかった。旅行者にしては、荷物がボストンバッグ一つで軽装だったが…)、そして、下りの途中から小田原まで一緒だった、普通のシティサイクルのカゴに軽く荷物積んだだけの兄ちゃん(笑)。急な下りをものともせず、快調に飛ばしてました。小田原市街に出てから声をかけたのですが、茅ヶ崎あたりから日帰りで箱根に挑戦していたとのこと。これもスゴイですよね…(汗)。彼から、「小田原あたりは美人が多い」と教えてもらいました(笑)。今回はそれを確かめる余力がありませんが、いずれ改めて確認に来ても良いかも(爆)。
お宿は小田原駅前のビジネスホテル。箱根関所資料館のベンチで探したのですが、小田原ほどの町というのになかなか満足のいく宿が見つからず、さじを投げて安宿に決めてしまいました。実際建物や部屋の方もお値段相応(ひいき目に見ても)で、かなりげんなりするものでした。3階くらいまでは学習塾で、宿はその上なんですよ。前の通りに自転車を放置しておくのはちょっと心配な感じだったので、仕方なくフロント前のベランダへ上げたのです。その際階段は厳しそうだったのでエレベーターを使ったのですが、それも充分な大きさではなく、自転車を斜めにして無理な体勢のまま乗らなければならなかったのが一層惨めでした。最終日なので、本当はちょっと張り込んでリッチに行きたかったのです(涙)。こんなことなら箱根に宿を求めれば良かったか……。
前回は小田原城のベンチで仮眠しました。城跡の前を通ったときはなんだか懐かしかったですね。今回は天気の問題もありましたが、この日の宿に比べると案外城のベンチの方が優雅な気分になれたかも知れません(爆)。一応、雨をしのぐための用意は持ってましたしね(気温の低下には耐え切れなかったかもしれないけれど)。
夕食のお店を探しに夜の小田原駅前をぶらぶらしました。駅前だけになんか雑然としていて「ゆったりリッチ」とは行きませんが、見知らぬ町を散策する開放感は少し楽しめました。スパ施設らしきものがあって鬱憤晴らしに入ろうかとも思いましたが、わざわざ箱根から降りてきて駅前のスパ施設というのもやるせないのでやめました。夕食は、やはり決めかねて、結局ハンバーガー屋さんでしたね。有名チェーン店ではなく、ちょっとだけ気の利いた感じの。旅行最後の夕食だというに、この簡単さはちょっと悲しいですね…。
翌日はいよいよ最終日。ゴールの自室まで100kmは切ってるはずですし、大きな難所もありません。ただ、天気だけが心配です…。
2003/09/19 記
2003/11/30 修正