Arduino NANO用ケース
FreeCADと3Dプリンターで作ってみたArduino NANO用ケースのご紹介です。
いろいろ妥協しつつ、一部互換ボードも想定しつつ(というかむしろそちらを主眼にしつつ)、とにかくコンパクトにっ。
能書き(経緯)
2010年代に巻き起こったマイコン工作ブーム。その火付け役の一つになったと言ってもいいだろう「Arduino」。開発環境とボード(ハードウェア)の両方を意味する名前で、その世界は複雑に広がっていて、入門するのにどのボードを選べばいいのか迷ってしったりしがちだけれども、自分は断然、やはり定番の「Arduino UNO」(執筆時点の現行機種は「UNO R3」)がオススメです。兎にも角にもまずはこれから。書籍もオンライン記事も圧倒的にこの機種を入門用に採用しているものが多く、また周辺オプション類もこの機種向けのものが圧倒的に豊富。鉄板です。自分は失敗してそのことを学びました(爆)。
で。入門の次のステップで選ぶボードはもちろん好き好きでいいわけですが。自分は「Arduino NANO」(かM5StickC)が一押しです。古いモデルのちっちゃいやつです。USBコネクターがmicroでなくmini-Bだったりするような古いヤツw。モデルとしては古いのだけれど、後続の他モデルでは満たされない利点があるのですね…。それは…
- 小さくて手軽。
- Arduino純正ボードの中では最小モデルの一つで、DIPパッケージのICに準じるサイズ感(UNO搭載のマイコンチップより二回り大きいくらい)。
- 純正ボードなのでArduino IDEにも最初からボード情報が収録されていて、サードパーティー製モデルのように追加のボード登録など不要で開発環境構築が楽ちん。
- 機能的にほぼほぼUNO互換。
- ボードサイズやピンの物理配置こそ違えど、ピンの数や番号などがほぼ同じに対応していて、UNO用スケッチの大半がそのまま使える。
- おつむ(マイコンチップ)自体がUNOと同じ(パッケージ違い)で、LEONARDOやMICROなどよりUNOとのスケッチの互換性が高い。
- ピンアサイン的にはむしろNANOの方がUNOより高機能。
- サードパーティー製の互換ボードが安く出回っている。
- 純正のNANOは実のところUNO以上のお値段なれど、互換ボード(主に中国製)が多数安価に出回っていて、お手頃に利用できる(互換ボードが多いのはUNOとNANOと…PRO MINI?)。
- 国内流通でも300円くらいからあって、海外通販だと更に安価なものも期待できる。
- USBシリアル通信チップが純正NANOと違ったりするけれど、利用環境さえ合えば変わりない使い勝手で利用できる。
つまり入門で学んだUNOのノウハウをほぼほぼそのままコンパクトに使ったりあちこち気軽に連れ出したり出来るっ!…のですが…。いかんせん、気軽に持ち出して使ったり開発したりするには、裸ボードなのがいささか心もとないのですよね…。周りの金属に触れてショートしないかとか。携帯時にピンヘッダーや部品が周りのものを傷つけないかとか。
その点流石にUNOは各方面から専用のケースが商品化されててそういう心配をしなくて済むのだけれど、どういうわけかNANO用のケースって見かけない…。「ニーズがない」ということではあるのでしょう。元々ブレッドボード実装想定で作られてるボードです。スタンドアロンで持ち歩くような人は少ないのかも知れない。けどね? 実質UNOと同機能なのよ? それがコンパクトに持ち歩けるのよ? そんなの、UNO代わりに使わない理由はないじゃない。ブレッドボード挿しっぱなしはスペースもったいないしせっかくの携帯性も損なわれるし。欲しい…、ケース。
無いものは作るしかない。と、いうわけで…、以前からちょっと興味のあった3D CAD & 3Dプリンターに挑戦しつつ、自力製作に取り組んでみた次第です。
概要
- 特徴など
- 3Dプリンターによる成形構造(適当な用語が見つけられなくて勝手に作った造語…大仰過ぎますが)で、ジャストサイズ。
- アクリル板組み立て式エンクロジャーのような組み立ての手間がない。(プリント枠からの引っ剥がしやバリ取りなどは必要ですが…ほぼプリント出しっぱで使える。)
- マージンスペースが少なく、NANOボードのコンパクトさを損なわない。
- 余計な出っ張りがなくトゲトゲ引っかからない。(ヘッダーピンも出っ張らない。)
- 側面など不用意なボードの露出がなくしっかりガードしてくれる。
- 外郭に「面」が構成されることでピンアウトなどの表示スペースが創出される。(ピンアウトラベルもついでに作成しましたっ。)
- フィラメント素材は白のABS樹脂を採用。
- PLAより柔らかく追加加工しやすい。
- 寸法の微調整や開口増設などやりやすい。
- 製作品はICSPピン位置の蓋肉厚を薄くし、開口増設の利便性を勘案(3Dプリント出力時点では閉口状態で、必要に応じてユーザーによる加工が必要)。
- PLAより温度耐性がマシで安易には溶けない(らしい)。
- 白なので、着色したり文字を書いたりする余地がある(3Dプリンターの印刷ムラによる凹凸があって必ずしも適した表面状態ではないですが…)。
- ピンヘッダーやUSBコネクターの実装状況に応じた3タイプ展開で製作。
- Type H
- ピン実装済みボードをすっぽり収容出来る標準モデル。
- 実装ピンはヘッダーでもソケットでもOK。
- 外形寸法:約W22*D47*H20mm
- Type L
- Type LL
- Type Lをベースに天板のUSBコネクター部を切り欠いてmini-Bコネクターが面一となるよう極限まで高さを切り詰めた最小モデル。
- NANOの小ささをしゃぶり尽くしたい向きに。(つまり作者の本命。)
- 外形寸法:約W22*D47*H9mm
- Arduino純正NANOと一部互換ボード(むしろ作者自身はそちらでの利用が主眼)の他、NANO EVERYでも使用可(このためだけに購入して調整を詰めたw)。
- NANO EVERY実装の様子(ピン未実装)
- (ピンアウトラベルはNANO EVERY向けも作成しました。)
- モデリングにはFreeCADを使用。
- 難点
- 不透明素材かつ覗き窓を設けていないなので、蓋を開けずにオンボードLEDの点灯状況は視認出来ない。またリセットスイッチへのアクセス開口もない。
- これは本製作が互換ボードでの利用を中心的に想定していて、純正ボードとの部品位置の互換性が担保されないためです。
- 必要があれば都度追加加工で対応するしかないのかな、と。ま、ABSですからその気になれば…。
- ボードや蓋のネジ止め・爪固定などの機構は設けておらず、固定は器と蓋の摩擦による簡易な嵌合のみに依る。そのため各部の緩みは避けられない。
- 作者のCADスキルや3Dプリンターの精度に照らし手間と実効性のバランスを勘案した結果の仕様です。
- まぁ…緩んだらテープやネジ止め剤みたいので留めるとか…、手当の道はあるのではないかと…(汗)。
- ABS素材なので経年や環境による収縮の可能性がある。
- 3Dプリンターによる製造なので、量産が困難。
- 見た目が無粋。カワイクないw。
- その他の注意点
- 全ての互換ボードに対応するわけではない(当然ですが…)。
- 作者の手持ちではAmazonで購入したUSB micro-Bコネクター実装タイプのNANO互換ボードが、基板サイズが大きくてそのままでは収まりませんでした(ボードをヤスって小さくすれば収まりますが…)。同モデルに合わせてケースサイズを少し大きくすることも考えましたが、そうすると他のボードには大きすぎてブカブカになってしまうのでやめました。
- 収容可否は現物を実装してみて確認するよりないと思ってます。図面寸法だけでは語れないところかと。なので図面は掲載しません(だってまともに描いていないもの 爆)。
- NANO EVERYのICSPピンは底面に出ているため天面の開口加工部からはアクセスできない。
- 秋月電子通商「シングルピンソケット (低メス) 1×20 (20P)」使用における注意。
- コンパクトで便利なソケットですが(作者超愛用)、構造が簡易で細ピンなどとの嵌合は甘いです。
- 接触不要などのリスクがあることは承知の上利用しましょう。
せっかく作ってみたものなので、何らかの形で他のNANOユーザーにも使ってみてもらえるといいな…なんて思って…。
手始めに、ネットショップサービス「BOOTH」での有償頒布を試行してみることにしました。
お申し込みお待ちしております(ぺこり)。ちまちま手作業で発送させていただきます。
関心を引きうる価格設定はせいぜい1000円が限界だろうと思ってはいるのですが、なにせどんくさい家内制手工業なのでそれだと作者の負担が厳しいのですよね…。スミマセン。
「Arduino NANO ピンアウトラベル 底面用」は「ダウンロード」節掲載のものと同一です。応援カンパ用の出品です、よろしくお願いしますw。ここと違って購入・ダウンロードのカウントが期待されるので、仲間の存在が感じられるといいかな、とも。
差し当たってはケース現物とピンアウトラベルデータだけの頒布です。
FreeCAD形式やSTL形式のモデリングデータの公開も一案なんですが、簡素な割にいい加減な作りでもあり、また場合によってそれが独り歩きを始めてしまう可能性が0ともいい切れないようにも思え、ひとまずペンディングとしています。
- Arduino NANO ピンアウトラベル 底面用 20201220版 [ZIP 51.3kB]
- 本ケースでの使用を想定して作成したピンアウトラベルです。もしかするとこれだけでもニーズあるかも?と思い、公開します。
- LibreOffice Drawで作成しており、その原版(ODG形式)と、それをPDF化したものを同梱しています。
- 市販のシール用紙などに印刷してご利用下さい。当然ながらカットは各自カッターなどでお願いします。
- 用紙サイズは写真L判(127*89mm)で作成しています(作者宅近所の百均ショップで入手しやすいためですw)。他サイズの用紙で印刷したい場合はそのまま強引に刷るか、ODFデータを加工してご利用下さい。
- 一般的なピンアウトと違って、底面から見た配置になっています。つまり巷のピンアウトとは左右逆です(そこが本ラベルの肝)。
- 正中線で切り離して左右入れ替えれば一応天面用の配置にもなる…かも知れません(文字配置が中央寄せで揃ってないのはそのためです)。「NANO」「EVERY」は逆になりますが(汗)。
- ICSPピンは天面から見た配置ですが、置き方の向きを変えた2タイプ用意しています。お好みでどうぞ。
- NANO用とNANO EVERY用を別に作りました。微妙に違ってる気がするので…。
- 色分けは、黒=GND、赤=電源系、紫=デジタル入出力、緑=アナログ入力、水=シリアル通信関係、桃=割り込み、黄=その他、です。
- ピンアウトの仕様は公式含めオンライン情報を参考に作者が独自に整理したものですが、誤りを含んでいる可能性が結構あります。なにせ情報源によって細々違ってたりするもので…。本ラベルの使用によるトラブルの責任は作者は負えませんのでご承知おきください。各々自己責任でひとつ…。誤り情報など、お気づきの点ございましたらご教示いただけると助かります。よろしくお願いします。
- ライセンスは「パブリック・ドメイン」(「クリエイティブ・コモンズ・ライセンス」の「CC0 1.0(CC0 1.0 全世界)」相当)とします。
カンパ歓迎です♪
ネットショップサービス「BOOTH」に応援カンパ用の商品登録をしてみました(いさな工房BOOTH「Arduino NANO ピンアウトラベル 底面用」)。気が向いたら応援お願いします。
「Amazonギフト券」ってのもこういうことに使えるみたいですね…。「Eメールタイプ」だと15円から任意の額でプレゼントが出来るようです。是非ページ末掲載のメールアドレス宛にw。
更新履歴(だいたい)
- 2020-12-22
- ネットショップサービス「BOOTH」での有償頒布試行開始に伴う更新。
- 2020-12-20
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